足のアーチは“全身のスタート地点”
— 股関節や姿勢、歩き方まで変わる理由 —
足は身体の中でいちばん地面に近い場所にあり、
「身体の土台」と呼ばれるほど重要な役割を持っています。
しかし、日常ではあまり意識されにくく、
問題が起きてはじめてその大切さに気づく人が多い部分です。
今回は、
・足のアーチの仕組み
・内側と外側アーチの違い
・アーチが股関節へ与える影響
・科学的(エビデンス)にわかっていること
について、わかりやすく解説します。
■ 足は「26個の骨」でできている精密な構造
片側の足には 26個の骨 が組み合わさっています。
(足根骨:7つ、中足骨:5つ、趾骨:14)
これは手よりも多く、非常に細やかな動きをつくるための構造です。
さらに、
足のアーチは “内側のアーチ” と “外側のアーチ” に分かれ、
それぞれ役割が違います。
■ 内側アーチ(可動性のアーチ):クッションとしなり
内側アーチは
・舟状骨
・第1〜3中足骨
など “骨の数が多い” 部分から構成されています。
【特徴】
・よく動き、しなりやすい
・着地の衝撃を吸収するクッション作用
・歩行・ランの推進力につながる
内側アーチが潰れる(偏平足・過回内)と……
✔︎ 足首が内に倒れる
✔︎ すねの骨が内にねじれる
✔︎ 大腿骨(太もも)が内旋
✔︎ 股関節が詰まりやすい
✔︎ 骨盤・腰の動きまで影響
これは臨床研究でも報告されており、
足部の回内(内倒れ)は股関節内旋を誘発する
という結果が多く見られます。
(Khamis & Yizhar 2007 / Neumann 2010)
■ 外側アーチ(安定のアーチ):体重を支える土台
外側アーチは
・第4・5中足骨
・立方骨
など “骨の数が少なく、安定する” パーツで構成されます。
【特徴】
・体重をしっかり支える安定作用
・荷重バランスを一定に保つ
・地面からの力を全身に伝える
外側アーチが安定すると……
✔︎ 足首がねじれない
✔︎ 股関節に余計な力が入りにくい
✔︎ 体幹の動きがスムーズ
✔︎ 歩行やスポーツの再現性が上がる
Murley(2009)の研究では、
足の安定は股関節外旋筋(お尻の筋肉)の働きを高める
ことが示されています。
■ 足のアーチと股関節は“直結している”
足は
「地面→足→すね→膝→股関節→骨盤」
というひとつの連鎖構造(キネティックチェーン)で動いています。
そのため、足のアーチが崩れると股関節へ影響が伝わります。
【よくある例】
● 足が内側に倒れる(過回内)
➡ 大腿骨の過剰な内旋
➡ 股関節が詰まる
➡ お尻が働かず腰へ負担
● アーチが整う
➡ 大腿骨が自然に正しい軌道へ
➡ 股関節がスムーズに回る
➡ 歩行・スクワット・スイングが安定
股関節だけを治そうとしても改善が難しい人は、
足に原因が隠れているケースが実際に非常に多いです。
■ 足を整えると、身体の“動きの質”が変わる
最近の研究でも、
足の感覚やアーチの機能改善が、
膝痛・股関節痛・腰痛の改善につながる
ことが報告されています。
また、
アーチを再教育すると、
・歩行速度
・バランス
・スポーツの安定性
などパフォーマンス面も大きく変化します。
■ まとめ:足は「身体の土台」。整える価値が大きい
● 膝がねじれる
● 股関節が詰まる
● 腰が反りやすい
● 歩きが不安定
● スイングが安定しない
こうした悩みの多くは、
実は「足のアーチ」から改善できる可能性があります。
足は身体のいちばん下にありますが、
全身バランスの“スタート地点”です。

