ゴルフとベンチプレスの科学的関係性
― 飛距離・スイング安定性をどう高めるのか?―
ゴルフのパフォーマンスは、技術だけで決まるわけではありません。
近年、多くの研究で「筋力トレーニングがゴルフの飛距離・スイングの安定性・ボールスピードを向上させる」ことが示されています。
その中でも、上半身の押す力を高める ベンチプレス は、正しく行えばゴルフにとって大きな利益をもたらすトレーニングです。
本記事では、スポーツ科学の研究をもとに、ゴルフとベンチプレスの関係性を分かりやすく解説します。
1. 筋力はゴルフパフォーマンスに直結する
ゴルフのパフォーマンスを数値として表すとき、
・クラブヘッドスピード
・ボールスピード
・飛距離
が重要な指標になります。
複数の研究では、筋力トレーニングを継続したゴルファーにおいて、
クラブヘッドスピードや飛距離が4〜6%向上 したと報告されています。
飛距離に換算すると 10〜15ヤードの差 になり、アマチュア・競技ゴルファーともに大きなアドバンテージです。
この「飛距離の改善」にもっとも関与するのが、
・下半身のパワー
・体幹の安定性
・上半身の押す力(プレス系)
といった基本的な筋力です。
2. ベンチプレスはゴルフの“フィニッシュ局面”に影響する
ベンチプレスで鍛えられる主な筋肉は、
・大胸筋
・上腕三頭筋
・三角筋前部
・肩甲帯周辺筋
これらはスイング動作の中で、
「インパクト直前〜フォローにかけてクラブを加速させる」 役割を担っています。
また、ベンチプレス1RM(最大挙上重量)が高い選手ほど、
ボールスピード・飛距離が高い傾向がある ことがスポーツ科学の研究で示されています。
ベンチプレスが直接スイングを真似する動作ではないにもかかわらず効果があるのは
「腕だけの力ではなく、地面→脚→体幹→肩甲帯→腕」の力の伝達能力が高まるから
です。
つまり、
ゴルフの飛距離=“腕力”ではなく“全身の力を押し出す能力”
であり、ベンチプレスはその“押す能力”をもっとも効率よく高める種目です。
3. ゴルフの形を模したトレーニングより“ベースの筋力”が重要
近年の研究では、
・ゴルフ特異的トレーニング(回旋系やチューブなど)
・基本的な筋力トレーニング(スクワット、デッドリフト、ベンチプレスなど)
この2つを比較した場合、
どちらも同じ程度ゴルフパフォーマンスを向上させた と報告されています。
つまり、
**「ゴルフの動きに似ているかどうか」より
「基礎的な筋力がしっかりあるか」が重要**
ということです。
ゴルフの形を真似したエクササイズだけでは筋力の伸びは限定的で、
クラブスピード向上の土台にはなりづらいのが現実です。
4. ベンチプレスの“デメリット”と注意点
ベンチプレスはメリットばかりではありません。
フォームを誤ると、逆にゴルフの動きを阻害するケースもあります。
■ ゴルファーが注意すべきポイント
1. 胸だけを肥大させすぎない
胸が硬くなるとテイクバックで胸郭が回りにくくなります。
2. 肩甲骨が固まるフォームはNG
肩甲骨の固定はパワーには良いが、スイングでは滑らかな動きが必要。
フルレンジのベンチプレスを行うことで肩甲帯の機能は保てます。
3. 回旋エクササイズとセットで行う
プレス系だけだと“押し出す力”に偏るため、
・胸郭の回旋
・肩甲骨の可動
・体幹の抗回旋
も同時に鍛えることで動作のバランスが取れます。
5. ゴルファー向けベンチプレスの正しい取り入れ方
以下のように行えば、飛距離・安定性の両方を高める“武器”になります。
● 1. 軽め〜中重量で可動域を広く使う
肩甲帯の柔軟性を保ちつつ筋力向上が可能。
● 2. 週1〜2回で十分
ゴルファーは体幹・下半身・回旋能力のトレーニングも必要なので“やりすぎ”は逆効果。
● 3. 体幹の安定性トレーニングを併用
プレスの力をスイングに転用するためには胴体の安定が必須。
● 4. 挙上動作のスピードにも変化をつける
爆発的なプレス力はクラブ加速に役立つ。
6. まとめ ― ベンチプレスはゴルファーにとって“価値ある武器”
研究データを総合すると、
● ベンチプレスの筋力向上は
・ボールスピード
・ヘッドスピード
・飛距離
すべてに好影響を与える。
● 正しく取り入れれば
・スイングの安定
・インパクトの強さ
・フォローの伸び
が改善する。
● ただし過剰な胸トレや不適切なフォームは
スイングの回旋を阻害する可能性があるため注意が必要。
“やり方さえ間違えなければ、ベンチプレスはゴルフの飛距離アップに確実に貢献する。”
これが、現在のスポーツ科学が示す結論です。
飛距離を伸ばしたい、スイングを安定させたいゴルファーにとって、
ベンチプレスは非常に強力なトレーニングとなり得ます。

