上着を着ると肩が痛いゴルファーへ ― それは“ゴルフ肩”のサインかもしれません

上着を着るときに肩が「ズキッ」「つっかかる」。
実はこれ、ゴルフ肩の“かなり早い警告サイン”になっている可能性があります。

ここでは、エビデンスに基づいて
「上着を着るときの肩の痛み」と「ゴルフ」の関係を整理していきます。

1.「上着を着ると肩が痛い」とき、肩では何が起きている?

コートやジャケットを羽織るとき、肩は

  • 外転(腕を横に開く)
  • 外旋(腕を外側にひねる)
  • 肩甲骨の動き(後傾・上方回旋)
  • 胸椎の伸展(背筋を伸ばす)

といった複雑な動きを同時に行っています。

このとき、肩の骨(上腕骨)と肩甲骨の間の「すき間(肩峰下スペース)」で、

  • ローテーターカフ(腱板)の腱
  • 肩峰下滑液包(クッションのような袋)

などが繰り返しこすられ、圧迫されることで炎症を起こした状態が
「肩インピンジメント症候群」と呼ばれます。

インピンジメントでは、腕を挙げる・横に開く・捻る動きで

  • コートを着る
  • 高い所の物を取る
  • 荷物を持ち上げる

といった日常動作で鋭い痛みや引っかかりが出やすくなります。


2.考えられる主な原因(エビデンスの観点から)

① サブアクロミアルインピンジメント/滑液包炎

  • 肩峰下の狭いスペースで、腱板や滑液包が挟み込まれ炎症を起こす
  • 「ある角度だけ痛い」「挙げきる前にズキッとする」という訴えが典型的
  • 加齢変化や、猫背・巻き肩姿勢、肩峰の骨棘などで起こりやすいと報告されています

日常動作として「コートを着る・脱ぐ」「頭の後ろで髪を整える」などで
ピンポイントの痛みが出ることが多いのも特徴です。

② 腱板損傷・腱板炎

ローテーターカフ(腱板)は、腕を挙げるときに上腕骨を関節の中央に保ち、
スムーズな回旋と安定性をつくる重要な筋群です。

ここに部分断裂や炎症が生じると、

  • 特定方向での強い痛み
  • 腕に力が入りづらい
  • 夜間痛(寝返りで痛くて目が覚める)

などの症状が出やすくなり、

  • 「後ろのポケットに手が入らない」
  • 「背中側に腕を回すと痛い」

といった訴えが増えてきます。

③ 四十肩・五十肩(凍結肩)

四十肩・五十肩(凍結肩)では、

  • 肩関節包や周囲組織の炎症・線維化による拘縮
  • 可動域の大きな制限(特に外旋・挙上・背中に回す動き)

がみられます。

  • 徐々に増悪する鈍い痛み
  • 夜間痛
  • コートを着る、ブラのホック、洗髪・結髪などが極端にやりづらい

といった症状は、凍結肩の典型的なサインとして
整形外科の研究や臨床報告でも繰り返し示されています。


3.ゴルフと肩の痛みの関係

アマチュアゴルファーの約半数はどこかが痛い

近年の調査では、アマチュアゴルファーの約半数以上が
過去6カ月以内に何らかの筋骨格系の痛みを経験しており、
その主な部位は「腰・膝・肩」と報告されています。

また、複数の研究をまとめたレビューでは、
ゴルフのケガの発生率は 18ホールあたり約2〜3件/1000ラウンド程度とされ、
年齢や競技レベルが上がるほど肩を含む上肢の障害が増える傾向も示されています。

ゴルファーに多い肩の障害

ゴルファーに多い肩障害としては、

  • サブアクロミアルインピンジメント
  • 腱板損傷・腱板炎
  • AC(肩鎖)関節障害
  • 関節唇損傷(特に若年競技者)

などが挙げられます。

  • 右打ちの方であれば、リード側(左肩)はトップ〜フォローで
    水平内転+内旋+内転が強くなり、インピンジメントやAC関節へのストレスが増加
  • トレイル側(右肩)はトップで大きな外旋ストレスを受け、腱板や関節唇への負担が増える

といったメカニズムが指摘されています。

加齢とともに「上着動作」と「ゴルフ肩」はリンクしやすくなる

中高年ゴルファーでは、

  • 肩峰下スペースの狭小化
  • 骨棘形成
  • 腱板の菲薄化(薄くなり、もろくなる)

といった加齢変化が進みやすく、その状態で

  • ドライバーのフルスイング
  • 多量の素振り・打ち込み

を行うことで、インピンジメントや腱板損傷のリスクが高まると報告されています。

つまり、

「上着を着ると肩が痛い」
=「ゴルフスイングで同じ組織に負担がかかっている可能性が高い」

ということです。


4.スイングの“クセ”が肩インピンジメントを悪化させる例

構造的なリスクに加え、スイングのパターンによっても肩への負担は大きく変わります。

例えば、

  • 胸椎があまり回らず、腰と肩だけで無理やりひねる
  • アドレスからすでに猫背・巻き肩になっている
  • トップでクラブが大きくクロスし、リード肩が過度に内転・内旋している
  • 体幹や股関節の回旋が少なく、腕だけで振りにいく
  • インパクト直後に急停止する「振り抜かない」スイングになっている

こうしたパターンは、肩峰下スペースをさらに狭くし、
腱板や滑液包の“挟み込み”を助長します。

その結果、

  • 練習量が増えるほど肩が重く・痛くなる
  • ラウンド翌日に、上着を着るときの痛みが強まる

といった「ゴルフと日常動作の悪循環」が起こりやすくなります。


5.セルフチェック:次のサインは要注意

以下のサインが複数当てはまる場合は、
「様子見」よりも、一度しっかりと評価を受けた方が安全です。

  • 片側の肩だけ、コートを着るたびに痛む
  • 腕を真上まで挙げられない/途中で痛みで止まる
  • 背中に手を回す(結帯動作)が極端にやりづらい
  • 夜間痛があり、寝返りで目が覚める
  • ゴルフの翌日〜数日間、肩の痛み・重だるさが続く
  • 数週間〜数カ月たっても改善傾向がない

腱板断裂や凍結肩など、画像検査を含む医療機関での評価が必要になるケースもあるため、
自己判断での無理なストレッチ・筋トレはかえって悪化につながることがあります。


6.横浜筋トレスタジオ/横浜ピラティススタジオのアプローチ

当スタジオでは、「肩」と「ゴルフ動作」を切り離さず、セットで評価していきます。

① 肩関節そのものの評価

  • インピンジメントテスト
  • 可動域(外旋・挙上・結帯動作)のチェック
  • 腱板・肩甲帯の筋力テスト

② 姿勢・胸椎・肩甲骨の動きのチェック

  • 猫背・巻き肩・頭部前方位の有無
  • 胸椎伸展・回旋の制限
  • 肩甲骨の上方回旋・後傾パターン

③ ゴルフスイングの動作分析

  • リード肩・トレイル肩に負担の大きいトップ・ダウンスイングのクセ
  • 体幹・股関節の使い方、下半身との連動
  • クラブの振り抜き方(フィニッシュの取り方)

④ 痛みを悪化させない範囲でのエクササイズ処方

  • 胸椎・肋骨・肩甲骨のモビリティエクササイズ
  • 腱板・肩甲帯・体幹の安定化トレーニング
  • ゴルフスイングに直結させる動作再教育

⑤ 日常生活へのフィードバック

  • 上着の着方・寝方・デスクワーク姿勢の工夫
  • 練習量のコントロール・クラブ選択のアドバイス

「日常生活で痛みが出ないこと」と
「ゴルフを長く続けられる肩作り」を両立させることを目標にサポートしていきます。


7.まとめ:上着のサインを“ゴルフ寿命”を守るチャンスに

  • コートや上着を着ると、肩が痛い・引っかかる
  • ラウンドや練習のあと、肩の重さや違和感が続く

この2つが重なっているゴルファーは、

肩インピンジメント+腱板トラブルの“予備軍”

である可能性が高くなります。

痛みが強くなってからゴルフをあきらめるのではなく、
「上着を着るときの違和感・痛み」という小さなサインの段階で、
一度、肩とスイングの両方をチェックすることが
“ゴルフ寿命を伸ばす一番の近道”です。