関節痛と冷え — 科学的根拠に基づく解説と対策
miyahara― 科学的根拠から考えるメカニズムと対策 ―
「寒くなると膝や腰が痛む」「冬は関節がこわばる」
このような訴えは、整形外科や運動療法の現場で非常に多く聞かれます。
では、冷えは本当に関節痛を悪化させるのでしょうか？
本記事では、冷えと関節痛の関係を科学的根拠（エビデンス）に基づいて整理し、なぜ痛みが出やすくなるのか、そしてどのような対策が有効なのかを解説します。
1．冷えが関節痛を引き起こしやすくする生理学的メカニズム
① 血流低下による影響
寒さを感じると、体は体温を保つために血管を収縮させます。
その結果、関節周囲や末梢の血流が低下し、以下の影響が起こります。
- 酸素や栄養の供給低下
- 老廃物の排出遅延
- 筋肉・靭帯・関節包の柔軟性低下
これにより、関節周囲組織が硬くなり、動かした際に痛みや違和感が出やすくなります。
② 関節液（滑液）の性質変化
関節の中には「滑液」と呼ばれる潤滑液があり、関節の動きを滑らかにしています。
低温環境では、この滑液の粘度が上昇すると考えられており、
- 関節の動きが重く感じる
- 動き始めに痛みや引っかかりを感じる
といった症状につながる可能性があります。
③ 筋肉・結合組織のこわばり
冷えは筋肉や筋膜、靭帯などの結合組織を収縮させやすくします。
その結果、
- 関節の可動域低下
- 動作時の負担増大
- 微細なストレスの蓄積
が起こり、関節痛の誘因になります。
④ 神経系の感受性変化
寒冷刺激は、痛みを伝える神経の感受性を高める可能性があります。
特に慢性痛を抱えている方では、
- もともと過敏になっている神経系
- 自律神経バランスの乱れ
が影響し、同じ刺激でも痛みを強く感じやすくなることが示唆されています。
2．研究から見た「冷えと関節痛」の関係性
疫学研究やレビュー研究を総合すると、
- 低温
- 気圧変化
- 湿度変化
と関節痛の関連性を示唆する報告は一定数存在します。
一方で、
「気温や湿度だけでは関節痛の増加を明確に説明できない」とする研究もあり、
冷え単独が直接の原因とは断定できないのが現状です。
重要なのは、
冷えは 血流・神経・活動量・心理的要因などと組み合わさって痛みを増幅させる“増悪因子” として働く、という理解です。
3．冬に関節痛が悪化しやすい人の特徴
臨床的に、以下の傾向が見られます。
- もともと関節疾患（変形性関節症など）がある
- 筋力や関節可動域が低下している
- 運動量が減りやすい
- 冷え性、自律神経の乱れがある
冬は「冷え」だけでなく、活動量の低下も重なり、関節への負担が増えやすい季節なのです。
4．関節痛と冷えに対するエビデンスベースの対策
① 温めるだけで終わらせない
温熱は一時的な血流改善には有効ですが、
根本的な対策には“動かすこと”が重要です。
② 軽い運動による血流改善
- ウォーキング
- 軽い体操
- ピラティスやヨガ
これらは、血流を促し、関節液の循環を改善し、
関節の動きを本来の状態に近づける効果が期待できます。
③ 筋肉と神経を同時に整える
単なるストレッチだけでなく、
- 呼吸
- 姿勢
- バランス
を意識した運動は、神経系の過敏性を抑え、
「痛みを感じにくい状態」を作る助けになります。
④ 冬こそ“動かさない”が最大のリスク
「寒いから動かない」
「痛いから安静」
この悪循環が続くと、
関節痛は慢性化・長期化しやすくなります。
5．まとめ
- 冷えは、血流低下・組織のこわばり・神経過敏を通じて関節痛を悪化させやすい
- 冷え単独が原因ではなく、複数の要因が重なって痛みが出る
- 温める＋適切に動かすことが最も重要
- 冬こそ運動療法の価値が高まる季節
関節痛は「年齢」や「季節」のせいにするものではなく、
正しく理解し、正しく対処すれば改善できる可能性が高い症状です。
関節痛にお悩みの方はぜひ体験にお越しください。
