男性の筋力低下は、脳機能低下のサインになり得る

年齢とともに「筋力が落ちた」「疲れやすい」「階段がつらい」と感じる男性は少なくありません。実はこの筋力低下は、体だけの問題にとどまらず、将来の認知機能低下(記憶力・判断力・集中力など)と関連する可能性が複数の研究で示されています。 

この記事では、一般の方にも分かるように、筋力と脳機能の関係をエビデンスに基づいて整理し、今日から実践できる対策までまとめます。

まず結論

筋力が低い人ほど、将来的に認知機能が低下しやすい傾向がある
筋トレ(レジスタンストレーニング)は、認知機能にプラスの効果が出る可能性がある
ただし、原因は一つではなく、炎症・代謝・活動量低下など複数要因が絡む

この整理が、現在の研究全体の「最も現実的な結論」です。 

エビデンス1 筋力が弱いほど、将来の認知機能低下リスクが高い

筋力の指標としてよく使われるのが握力です。握力は全身の筋力や健康状態の代表値になりやすく、大規模研究でも頻繁に採用されています。

複数の縦断研究(追跡研究)をまとめたメタ解析では、ベースラインの握力が低いことが、将来の認知機能低下や認知症などの不良な認知アウトカムと関連することが示されています。 

また、UKの大規模データを用いた研究では、中年期を含む集団で握力が低い人ほど、認知症や認知機能、脳画像指標の面で不利な関連がみられたと報告されています。 

ポイント
筋力は「体力の指標」だけでなく、「脳の健康の指標」にもなり得る

エビデンス2 サルコペニアはMCIや認知症と関連する

サルコペニアは、筋量や筋力、身体機能の低下を含む概念です。

2024年のメタ解析では、サルコペニアが軽度認知障害(MCI)やアルツハイマー病、その他の認知症と有意に関連すると整理されています(研究間で定義や評価法が異なる点には注意が必要)。 

2025年のシステマティックレビュー/メタ解析でも、サルコペニア(および可能性サルコペニア)が認知機能障害と関連することが示されています。 

ポイント
筋力低下が進むほど、認知機能低下のリスクが重なりやすい可能性がある

エビデンス3 筋トレは認知機能を改善し得る

「関連がある」だけでなく、「介入で良くなるか」は重要です。

2026年1月にPubMedに掲載された、レジスタンストレーニングのRCT(無作為比較試験)をまとめたメタ解析では、筋トレが全般的認知機能、ワーキングメモリ、言語性学習・記憶などの改善と関連したと報告されています(ただし、処理速度や注意などは有意差が出ない項目もあり、効果は一様ではありません)。 

ポイント
筋トレは、体を強くするだけでなく、脳の機能にもプラスが出る可能性がある

なぜ筋力低下が脳機能低下につながるのか

ここは「確定事項」というより、研究全体で整合性の高い説明です。

1 身体活動量が減り、脳への刺激が減る
筋力が落ちると外出・移動・趣味が減りやすく、脳に入る刺激(情報処理、判断、社会交流)が減ります。これは認知機能低下の土台になり得ます。

2 代謝の悪化(インスリン抵抗性など)が起きやすい
筋肉は最大級の代謝臓器です。筋量や筋活動が減ると、血糖コントロールが崩れやすくなり、血管リスクや脳のエネルギー利用に不利に働く可能性があります。

3 筋肉から出る物質(マイオカイン)が減る可能性
運動によって筋肉から分泌されるマイオカイン(BDNF関連の経路やイリシン等を含む)は、筋と脳の相互作用に関与する可能性が議論されています。運動がこれらに影響することを整理したレビューもあります。 

男性が今日からできる対策 現実的な優先順位

大切なのは「完璧」より「継続」です。ここでは、再現性が高い順に並べます。

1 週2回以上の筋トレを基本線にする
下半身(スクワット系、ヒップヒンジ系)+押す・引く(胸、背中)を中心に、全身をまんべんなく。
筋肥大目的でなくても、筋力維持の刺激が入ることが重要です。

2 歩行と筋トレをセットにする
筋トレだけ、歩くだけ、よりも「両方」を同時に進める方が生活機能が落ちにくくなります。まずは毎日合計6000〜8000歩程度を目安に、可能な範囲で。

3 タンパク質と睡眠を軽視しない
筋肉が減ると、運動の効果が出にくくなります。
タンパク質は毎食に分散、睡眠は最低6.5〜7時間を意識するだけでも土台が変わります。

4 握力や立ち上がりを定期的にチェックする
握力、椅子からの立ち上がり、階段の息切れなど、体のサインは早い段階で出ます。放置せず、早めに対策が合理的です。

まとめ

筋力低下は、将来の脳機能低下と関連することが複数の研究で示されている 
筋トレは、認知機能にもプラスの効果が出る可能性がある 
筋力は中年期からの「先回り投資」で、生活の質と仕事のパフォーマンスを守りやすい

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参考文献(主要)
握力と認知機能低下の関連(縦断研究メタ解析) 
中年期を含む集団での握力と認知・認知症・脳画像の関連 
サルコペニアとMCI・認知症の関連(メタ解析) 
筋トレ介入と認知機能(RCTメタ解析) 
運動とマイオカイン(筋と脳の相互作用に関するレビュー)