肩の痛みは「安静」より「正しい運動」で改善する

― エビデンスから考える運動療法の本質 ―

肩の痛みは、日常生活・仕事・スポーツの質を大きく低下させます。
「肩が痛いから動かさない」「湿布と注射で様子を見る」
こうした対応を続けている方も多いのではないでしょうか。

しかし近年の研究では、肩痛の多くは“適切な運動療法”によって改善することが明確になっています。

本記事では、
✔ なぜ肩が痛くなるのか
✔ なぜ運動療法が有効なのか
✔ どんな考え方で運動を行うべきか

を、エビデンスをもとに分かりやすく解説します。


1. 肩痛の正体は「炎症」だけではない

肩痛というと、

  • 腱板炎
  • 四十肩・五十肩
  • インピンジメント症候群

などが思い浮かびますが、近年の研究では画像所見(MRI・レントゲン)と痛みの強さは必ずしも一致しないことが示されています。

▶ エビデンス

無症状の人でも、

  • 腱板断裂
  • 石灰沈着
  • 変性所見

が高頻度に見られることが報告されています。
(Lewis et al., 2015 / BMJ)

👉 「壊れている=痛い」ではない
👉 痛みは“構造”だけで決まらない

これが肩痛理解の第一歩です。


2. 肩は「単独の関節」ではない

肩関節は、

  • 肩甲骨
  • 鎖骨
  • 胸郭
  • 背骨

と連動して機能する非常に複雑な関節です。

肩痛が起きやすい背景

  • 胸郭の硬さ(猫背・浅い呼吸)
  • 肩甲骨の安定性低下
  • 体幹・股関節との連動不足
  • 反復動作や片側負荷

これらが重なると、肩関節に過剰なストレスが集中し、痛みが慢性化します。

👉 肩だけをマッサージ・ストレッチしても改善しない理由はここにあります。


3. なぜ運動療法が有効なのか?

▶ エビデンスの結論

多くのシステマティックレビューで、
肩痛に対して運動療法は、注射や物理療法と同等、またはそれ以上の効果がある
と報告されています。

  • Holmgren et al., 2012
  • Kuhn, 2009
  • Littlewood et al., 2019

特に重要なのは以下の点です。

運動療法がもたらす効果

  • 筋出力と協調性の改善
  • 肩甲骨と上腕骨の位置関係の正常化
  • 痛みに対する脳の過敏反応の低下
  • 血流・代謝の改善

👉 **「動かすことで治る」**のではなく、
👉 **「正しく使える状態に再教育する」**のが運動療法です。


4. 「鍛える」より「整える」が先

肩痛のある方がやりがちな間違いが、

  • チューブでとにかく鍛える
  • 痛みを我慢して回す
  • YouTubeの体操を闇雲に行う

ことです。

運動療法の優先順位

① 呼吸・胸郭の可動性
② 肩甲骨の位置と安定性
③ 上腕骨のコントロール
④ 必要に応じた筋力強化

この順番を無視すると、
「鍛えているのに痛い」状態が続きます。


5. 痛みは「脳と神経」の問題でもある

慢性的な肩痛では、

  • 痛みに対する恐怖
  • 動かすことへの不安
  • 過去の痛みの記憶

が脳内で強化されていることが分かっています。

▶ エビデンス

運動療法は、

  • 中枢神経の過敏性を下げる
  • 痛みの再解釈(Pain Neuroscience Education)
  • 安全な動作経験の蓄積

を通して、痛みの感じ方そのものを変える効果があります。

👉 だからこそ
👉 「少しずつ・安心して・成功体験を積む」運動が重要です。


6. まとめ|肩痛改善の本質

肩の痛みを改善するために必要なのは、
❌ 強い刺激
❌ 我慢
❌ その場しのぎ

ではありません。

✔ 肩を含めた全身の連動
✔ 正しい動きの再学習
✔ エビデンスに基づいた段階的運動

これこそが、再発しにくい肩を作ります。


肩痛でお悩みの方へ

「年齢のせい」「もう治らない」と諦める前に、
運動療法という選択肢をぜひ知ってください。

痛みの原因を整理し、
あなたの身体に合ったアプローチを行うことで、
肩の状態はまた良くなる可能性があります。

お悩みの方はぜひ体験にお越しください。