視覚と猫背の関係 ― 科学的根拠から読み解く姿勢の秘密
姿勢は「筋力」だけで決まらない
猫背やストレートネックといった姿勢の崩れは、多くの方が「筋肉が弱くなったから」「加齢で骨が歪んだから」と考えがちです。
しかし近年の研究では、目からの情報=視覚 が姿勢をコントロールする上で大きな役割を果たしていることが明らかになっています。
視覚機能と姿勢安定性の関係
人間の姿勢制御は、①足裏や関節からの体性感覚、②耳の奥の前庭覚、③視覚の3つを統合して行われます。
その中でも視覚の比重は非常に大きく、研究によれば視力やコントラスト感度、両眼視の低下は姿勢の安定性を悪化させると報告されています。
- Lord et al. (2000):高齢者ではコントラスト感度とバランス機能の関連が強く、転倒リスクに直結。
- Wood et al. (2022):視覚障害を持つ人は姿勢反射や筋活動が異常になり、立位の安定性が低下する。
つまり「見えにくさ」が姿勢不良の土台をつくっているのです。
デジタルデバイスと猫背の悪循環
さらに現代社会では、スマホやパソコンの長時間使用が「姿勢崩れ」を加速させています。
- Noonari et al. (2024):大学生の調査で、PC作業と猫背・首の前突に有意な関連が確認。
- Tapanya et al. (2024):スマホを使う時間が長いほど、姿勢不良とバランス不安定が増加。
スマホを下向きで操作する「テキストネック姿勢」では、頭の重さが数倍に感じられるほど首に負担がかかり、その影響は背中の丸まり(胸椎後弯)にも波及します。
メガネや環境の工夫が姿勢を左右する
視覚と猫背のつながりは、メガネや作業環境によっても変わります。
- Weidling (2015):累進多焦点レンズ(遠近両用)使用者は、非使用者より首が前に出やすい。
- Willford (1996):モニターの高さを低めに設定すると、頸部・肩の筋負担が軽減される。
つまり「どんなメガネを使うか」「画面をどの位置に置くか」など、ちょっとした工夫が猫背や肩こりの予防につながります。
首と背中はセットで崩れる
猫背は首とも密接に関わっています。
- Torres-Cusihuaman et al. (2023):学童の調査で、胸椎後弯の大きい人ほど首の前方頭位が強いという相関を確認。
つまり、背中と首は連動しているため、「胸を張る」や「顎を引く」といった部分的な意識では不十分で、全体をバランスよく整える必要があるのです。
見え方が姿勢を変える“証拠”
さらに実験的研究では、プリズムレンズを用いると姿勢や歩行が変化することも示されています(Michel 2003, Bultitude 2012)。
これは「見え方」が直接的に姿勢を動かす証拠であり、視覚と運動制御のつながりを裏付けています。
まとめ
- 視覚機能の低下は、無意識に「見やすい姿勢」をつくり、猫背や首の前突を引き起こす。
- スマホやパソコンの習慣は猫背を加速させる。
- メガネや作業環境の工夫は、猫背や肩こりの予防・改善につながる。
- 胸椎と首は連動しているため、全体を整えるアプローチが必要。
📌 横浜筋トレスタジオでは、こうした 視覚・首・背中のつながり に注目し、科学的根拠(エビデンス)に基づいた運動療法で猫背や姿勢不良の改善をサポートしています。
猫背や首肩こりでお悩みの方、将来の健康を考えて姿勢を整えたい方は、ぜひ一度体験トレーニングでご自身の変化を実感してみてください。