日本と海外の運動療法の格差とは

体の痛みや不調に対して、海外では運動療法が「早く届き、長く続く」仕組みになっている国が多い一方で、日本は仕組みの面で遅れが出やすいと言われます。
ここでの格差は、運動療法の効果そのものよりも、エビデンスのある運動療法が社会に届く制度設計の差として整理します。

この記事で伝えたいこと

日本は運動療法のレベルが低いというより、根拠のある運動療法が必要な人に届くまでの道のりが長く、継続しにくい構造が残っている、というのが本質です。
その結果、痛みや不調が慢性化してから運動に取り組む流れになりやすく、海外と比べて不利に見えます。

海外の運動療法が強く見える理由

海外(欧州、豪、北米など)では、運動療法が医療の中で次のように扱われやすい傾向があります。

1つ目は、入口が早いことです。
理学療法に自己判断でアクセスできる国や地域が多く、ファーストコンタクトとしての理学療法が制度的に位置づく考え方が示されています。 

2つ目は、ガイドラインが運用されやすいことです。
たとえば英国NICEの腰痛ガイドラインでは、画像検査をむやみに行わないこと、セルフマネジメント、運動プログラム(mind–body含む)を治療の柱として扱うことが明確です。 

3つ目は、一次医療から運動プログラムへつなぐ発想があることです。
英国などで運動紹介(Exercise referral schemes)が運用され、効果も系統的レビューで検証されています(効果は小さめでも一定の改善が示される、など現実的な評価)。 

日本が遅れて見える3つのポイント

日本が遅れて見える理由は、現場の熱量よりも制度と導線の問題が大きいです。

1 入口が遅くなりやすい

World Physiotherapyの国別情報では、日本は理学療法へのダイレクトアクセスが許可されていない扱いになっています。 
これは、運動療法に早期に辿り着く導線が作りにくいことを意味します。痛みが出た直後の段階で、運動療法にスムーズに接続できる国と比べると、慢性化リスクの面でも不利になりやすいです。

2 退院後に運動療法が続きにくい

運動療法が強く推奨される代表領域が心臓リハビリですが、日本では外来心臓リハ参加率が推定3.8〜7.6%と報告されています。 
急性期の治療は普及している一方で、回復期から慢性期にかけて運動療法を標準導線として継続させる仕組みが弱いと指摘されています。 
このように、治療後の再発予防や体力回復のフェーズで運動療法が続かないのは、日本の遅れとして分かりやすく表れやすい部分です。

3 エビデンスを現場で回す仕組みが弱くなりやすい

日本の理学療法士を対象にした調査では、EBPの重要性への賛同は高い一方で、EBP教育を受けたと答えた割合が約11%という結果が報告されています。 
また、臨床ガイドラインの利用も限定的というデータがあります。 
これは個人の能力の問題というより、教育機会、職場の運用、時間資源などを含む「仕組み」の問題として議論されています。 

ピラティスは海外ではどう扱われるか

海外でも、ピラティスが固有名詞として医療の中心にあるというより、運動療法の一形態として扱われることが多いです。

英国NICEの腰痛ガイドラインでは、運動は biomechanical や aerobic だけでなく mind–body を含むグループ運動として推奨枠に入っています。 
NHSも慢性腰痛向けにピラティスに着想を得た運動を紹介しつつ、研究はさらに必要としながらも一定の有用性を示しています。 

ピラティス自体の研究も増えており、腰痛に対して痛みや機能の改善が示される系統的レビューとメタ解析があります(ただし、他の運動と比べて常に圧勝というより、適切な運動療法の有力な選択肢という位置づけが現実的です)。 

日本でピラティスが医療と分断されやすいのは、ピラティスの価値が低いからではなく、医療導線と民間運動サービスの連携設計が弱いことが背景になりやすいです。

日本でも海外型に近づけるために大事な視点

日本でも、仕組みの弱さを現場運用で補うことはできます。

1 痛みが長引く前に運動療法へつなぐ
症状が軽いうちに、評価と運動の設計ができる専門家へ。

2 継続の設計を先に作る
週1回の指導だけでなく、自宅メニューと生活動作の修正、再評価の流れまでをセットに。

3 アウトカムで確認する
痛みだけでなく、可動域、筋力、歩行、呼吸、日常生活の指標などを定期的に確認し、効果が出る形に微調整する。

横浜筋トレスタジオの考え方

当スタジオでは、筋トレかピラティスか、ではなく、運動療法として必要な要素を組み合わせます。
姿勢、動作、呼吸を評価し、ピラティス要素で土台を整え、筋トレで出力を上げる。さらに自宅で続けられる形に落とし込み、体が変わるまでの道筋を設計します。
日本の構造的な遅れが出やすい部分を、現場の設計で埋めていくのが私たちの役割です。

参考情報

World Physiotherapy 理学療法へのダイレクトアクセス定義とポリシー 
World Physiotherapy 日本のDirect access情報 
日本の外来心臓リハ参加率 3.8〜7.6%(全国調査) 
日本の心臓リハ現状レビュー 
日本の理学療法士におけるEBP調査(教育11%など) 
英国NICE 腰痛ガイドライン(運動、セルフマネジメントなど) 
NHS 慢性腰痛向けピラティス動画と注記 
ピラティスと腰痛の系統的レビュー・メタ解析